油揚げ10枚
ここ東京都武蔵野市を仮住まいに選んだのは、駅からの道に惹かれたからだと思う。 三鷹駅北口から徒歩20分、ちょっと遠いなと思いながらも その道に軒を重ねるお店たちに、なんとなく惹かれたのである。 その一つが以前にも紹介したお豆腐屋さんである。 お豆腐屋さんと言えば小学校の同級生の田代君の家はお豆腐屋さんだった。 また、新婚時代に借りたアパートはお豆腐屋さんの2階だった。 いつからか、街からお豆腐屋さんが消えて久しいのだが、そんななか古風な佇まいを見せて そのお豆腐屋さんはあり、まず、その存在に驚いた。 次に驚いたのは、そこの店主の顔である。 全身を燃焼させて生きているという感じ? で清々しい。 その上、私は自分が帽子屋というこの時代に儚くはあってものれんを背負っている意味で仲間意識を感じてしまったのである。 ここに住んでいる間は、豆腐はここで買うと決めた。 ところが、そうこうしているうちに、顔馴染みになり言葉を一言三言交わすようになって 先日など、こんなことを言われたのである。 「もしかして、女優さんをしていたとか?」と。 ビックリマークを50回つけてもいいくらいの驚きである。 いえいえ、まさか! と答えながらも満更悪い気はしない。 女優さんって言っても個性派から色々なんだけど 最大の褒め言葉として受け取ってしまったのです。 油揚げを買うつもりではいた。 でも、女優という言葉に、何枚買おうかと思う思考がぐあん、と揺れた。 「10枚! 」気がついたらそう言っていた。 自分の中にも店主の中にも、確かに一瞬「えっ?」という感嘆符が生まれたけど後へは引けない。 ま、いいかと帰り道は自然に口角が上がり足取りも軽くなる。 帰宅して夫に自慢げに私は話す。 「うまいな〜豆腐屋さん、それで油揚げ10枚買ったわけね?」 まだまだ残っていた私の女心、それが自分でも可笑しくて一緒に笑った。 夫婦二人の生活だもの、冷凍庫にしまった油揚げは、まだ健在である。 今日から6月ですね。 寒かったり暑かったりおかしな気候ですが 衣服の調節をまめにして、お元気にお過ごしください。 写真は先日つくったドライカレーです。 野菜たっぷり、豆も入れました。 ********************** いつもお読みくださりありがとうござい
2025/06/01 07:12